正月2冊

 既にツイッターとかで感想呟いたりしてるんですが、まとめて再掲。時により加筆。

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

 いやあ、まさに異形。溢れかえる造語と独特の語り口になかなかついて行けず、相当に苦戦した読書でした。自分自身では物語の骨格を把握することができず、結局大森望さんの解説を読んでストーリーと設定をようやく理解する始末。自分の言語センスの貧困さに恥じ入る次第。あまりの情けなさに同類を求めて(無様)ネットでいろんな人の感想を検索すると、存外に「難解。だがスゴイ。よくわからないがスゴイ」という俺同様の感想の人も多くいて、少し安心したのでした。無論、きちんと全てを理解して楽しめればそれが最高なのですが、仮に理解できなかったとしてもこの作品は「異形の言語で描かれた、異形と化した人間と世界の物語。すなわち、異形故に普通の人間の常識と理解を拒む」のだと解釈できるのではないか…などと、勝手に愚考する次第。つまり、例え理解できずとも、我らの世界と全く異なる世界の風聞録を読んだ、と思えばこれはこれで一つの楽しみ方なのではないかと。
 その異様さの前に、凡人はただただ圧倒されながら、驚嘆しながら眺めるのみ。
 …と、理解できなかったことをさっきから必死で弁解しながら感想書いてますが、かといって読むことが苦痛だったかと言えばそうではなく。これだけ理解できなかったにも関わらず、読むのを止めたいとは一度も思わなかったのでそ。人知を超える異界を覗き込むのにも似た蠱惑、とでも言うか。これはこれで実に心地よい、新年早々濃ゆい読書体験でした。ただ、やっぱり自分がこの物語を理解できる知性を有していないのは、なかなかに悔しい。ただただ悔しいです。
イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 これまた随分前の作品(^^;読んだのは文庫化された後ですが、最初に単行本で出たのは10年近く前じゃないですか。乗り遅れることは甚だしい。文庫で買ってからもそれなりに寝かせてあった(^^;のですが、それには理由があって、この本のどんでん返しのキモである「衝撃のラストから2行目」を購入時にうっかり眼にしてしまったので、忘却できるまで読むことができず、時間を要したのでした。ですが、あらかじめ身構えて読んでしまったことには変わりなく、そのせいで衝撃はあまりなかったのが正直なところ。それでも、あちらこちらに引かれた細かい伏線の数々や構成の妙(前半を「side−A」、後半「side−B」とした章立てにも、ちゃんと意味がある)には唸らされました。ただ。トリックそのものとしては使い古されたものだし、伏線の緻密さはさておき一番分かりやすい手がかりが割と序盤で出てくるので、全貌は見抜けなくともメインの仕掛けは容易にわかってしまう。なので、あちらこちらで絶賛されるほどの驚きは感じませんでした…
 あと、恋愛小説が苦手な俺は、この話が初読時には何の変哲もない平凡な恋愛小説としか読めないのがキツかった。真相がわかった後で再読すると全然違うお話(どうかするとサイコスリラー?)に変貌すると思われるので、次読むときはその辺は苦にならないとは思われますが、今は時間的余裕がない…いつか時間を置いて、じっくり読み直したいと思います。(そのときまでに真相を忘れていたらどうしよう(^^;… )

 ちなみに、今読んでいるのは冲方丁さんの「はなとゆめ」。この人の小説はなんか「もののふ」というイメージがあるので、女性が主役の平安宮廷もの、というところでかなり意外性アリ、楽しみです。