「雷鳴の夜」ロバート・ファン・ヒューリック 和爾 桃子訳(bk1)

雷鳴の夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
 ディー判事シリーズ初挑戦です。実はヒューリックという作家さんも比較的最近知った若輩者の俺。いや、年齢で言うと若輩どころかオヤジなんですが中身は…とかはさておき。新しい名探偵に出逢えた喜びで一杯です。なんて言うと大げさですが、古代中国というエキゾチックな舞台仕立てにカーを彷彿とさせる妖異な謎、複雑な人間関係、テンポのよいストーリーテリング。そして、しっかり古代中国の文化的・思想的ペダンティズムも物語の中に無理なくとけ込む形で織り込まれています。この本、かなーり薄い本なのですが、物語の中身は相当贅沢にいろんな要素が詰め込まれていますよ。ごちそうさま。
 個人的には、骨の髄まで儒教の徒としての思考回路が組み込まれているディー判事がやっぱり趣深い。そして、根は人情家で寛大だけど、真の悪に対してはきっちり制裁を下すところも、惚れます。ラスト、本当にかっこいいんです。怖いけど(笑)結構ハードボイルド。