「『ギロチン城』殺人事件」北山猛邦(bk1)

『ギロチン城』殺人事件 (講談社ノベルス)
 ネタバレスレスレの箇所あり。未読の方はご注意を。
 明らかにリアリティ度外視の「城」というベタな舞台設定の本格推理なんだけれども、そんなことどうでもよくなる感じの迫力。スクウェア降霊術やロシアの首狩り人形の伝説など、蠱惑的なまでにおどろおどろしい小道具が巧みに絡み合って、実に読ませます。トリックはまあ、島田御大を思わせるスケールのでかいものですが、俺は割と早い時期にわかっちゃったかな。だけれども、伏線も堅固だし、立派なフェアプレイで好感持てました。
 真犯人の正体は、少し反則な気もしましたが、物語全体に横たわるテーマ(ヒトと人形はいったい何が違うのか…?ってことでいいんでしょうか)とリンクしているので、これまたマイナスにあらず。驚愕度においては、前作「アリス・ミラー城」から比べるといささか大人しいですが、きちっと隙がなくまとまっている良品、という感じでしょうか。
 ちなみに、「**を**と化した」という犯人像には、少し前に読んだとある作家さんのデビュー作と似通っている部分があります。が、謎解きの際何の前触れもなく唐突に示されて「はあ」と呆けるしかなかったその作品での扱いより、この「ギロチン城」の方が雰囲気作りといい伏線の挽き方といい何十倍もスバラシイ。それなのに、その某作家さんときたら、某所で「最近面白いミステリがない」とかなんとか…視野は広く持ちたいものですねw
 それはさておき、この作品の中でもう一つ印象に残ったのは、極限状態の中でさりげなく披露される幕辺による探偵論。「探偵なんて誰でもなれる。死と絶望を飼い慣らせれば」(今手元に本がないので細部は違うかも)なんて台詞、本格推理における名探偵の存在に関するひとつの解答ではないかとすら思いました。
 ともかく、俺にとって北山氏は間違いなく追っかけなくてはならない作家の一人になりました。
 次作も、「城」シリーズなのかな?だとすると今度はどんな恐ろしい「城」なのか楽しみです。