「されど罪人は竜と踊る」浅井ラボ(bk1)

されど罪人は竜と踊る (角川スニーカー文庫)
 以前、たまたま買ったザ・スニーカーに特集記事が載っていたのを見て、面白そうなので買っていたものを積読にしていたのを思い立って読みました。
 というか最近はなんだかファンタジーが読みたくて仕方ないのですよ。
 とにかく、悪口大戦が素敵面白すぎ。口の悪いキャラクター同士が言い合いをするシーンがある小説は数あれど、ここまで悪し様に罵りあうのはなかなか珍しいのではないかと。
 だが、戦闘の再コンビを組んでいるときには最強のパートナー同士となる。この点についても、形式としてはよくあるパターンっちゃパターンなわけですが、ここから「口喧嘩」の部分を最高に先鋭化し特化させた結果、とんでもなく刺激的で新鮮なテイストが生まれた模様。しかも、悪口のひどさの分、戦闘時の信頼関係の強さがより際だちます。
 しかし、そこだけが売りかというとそんなことはなく、極めて高度な謀略の数々や、豊富すぎるとしか言いようのないボキャブラリイを駆使して作られた独特の専門用語・造語を駆使しての濃密なアクションシーン、緻密でリアリスティックな世界観など、褒めちぎりたい側面は多々あり。
 これだけ褒めておいてなんですが、それでもこの作品は万民向けではありません(笑)。
 先述のような独特の専門用語・造語のせいで、かなり読みづらく(文章が下手という意味に非ず)、あと悪口オンパレードも多分にネガティブで下品なので(笑)、真面目で純粋な性格の人は絶対に不快感を覚えます。
 しかし。
 闇を透かして、面白いファンタジーの神髄を見つけたいなら、この本は必ず満足させてくれるでしょう。