「ジーヴズの事件簿」P.G.ウッドハウス著/岩永正勝・小山太一編訳

ジーヴズの事件簿
P.G.ウッドハウス??著 / 岩永/正勝??編訳 / 小山/太一??編訳
文芸春秋 (2005.5)
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ウッドハウスという作家さんが、そんなにも時代を支えた作家さんだと全く知らなくて、今回の邦訳出版ラッシュ(?)に触発され、やはり読んでおかなくてはと思い、大枚はたいて買ったのですが…うーんうーん。すみません、英国風のユーモアと自分のユーモアのセンスっていうのがここまで乖離してんのか、と困り果てるばっかりでした。BK1で書評を書かれていた方お二人も、声を揃えておっしゃっていましたが、バーティもその友人ビンゴも、どこにも良いところ優れたところがない。まあ、この時代の貴族階級を扱った小説では、似た立場のキャラクター、いわゆる高等遊民というか働かなくても暮らせる財産をお持ちの人もよく出てくるのだけど、どこかに気品が漂っているものだが、この人たちにはそれもない。短編の中には、労働者闘争に励む活動家が登場するものもあるが、ぶっちゃけこの人たちに財産分配してやれよと真剣に諭したくなる。まあ、ジーヴズはまあ、それなりに紳士で気品と教養があって、尊敬できる執事さんではあるんだけど。たまたまこの本に収録されている話がそういう話ばっかり、ということなのかもですが、彼の持ってくる「最良の解決」の大部分が、バーティの立場を犠牲にすることによっていろんな人間関係をぶちこわすことってのもどうよ??バーティが立ち聞きしてしまう、彼が「知性はゼロ。頭脳皆無」と評する発言と考え合わせると、単に馬鹿な身の程知らずのお坊ちゃんの面目を潰して愉しんでいる嫌な人のようにしか思えないんですが…。
俺自身は、世界的に評価されている巨匠を、自分が読んで面白くなかったからといって悪く言うほど傲慢にはなれませんが、それでも、時代と国籍、感性というものには、飛び越えることの出来ない溝がある場合もままあるな、と実感して頭を垂れる次第。うーん、俺もイギリス人に生まれたかったかも。