「ストップ・プレス」マイクル・イネス 富塚由美訳

初めてのマイクル・イネスなわけですが。「ハムレット復讐せよ」も、傑作ながらもサクサクは読めなさそうなので積んであるのが現状なんですが。この作品は、「このミス」でも上位だし読みやすそうなので手に取りました。
兎にも角にも、小説の中の人物「スパイダー」が暗躍し、作者しか知らないはずの悪戯(犯罪…というほどのものではないよねえ)を繰り広げる、という設定が魅力的。しかしながら、人は死なないし(死ぬかも知れないことは、ちらちらとほのめかされるものの)パーティの参加者はみんな好き勝手に騒いでいるので、緊張感はまるでなし(笑)。アプルビイ警部の登板後も、あまり捜査らしい捜査はされないので、がっつりと手応えのある本格推理を期待すると物足りないです。が、いささか強引ではあるものの、何故犯人が作家の構想の中にしかないはずの「スパイダー」の行動をなぞらえることができるのか、という謎は、きっちり解決されるので、まずまず満足。ただ、この作品の持ち味であろう英国風ファルス風味には、あまり乗り切れなかった俺は、やはり英国人にはなれないのだな、と少し悲しくなりました。