今年は珍しく

 1月の間に本をザクザク読めてる気がします。前回の更新から後、3冊読了。本年の読書、現在5冊。こんなのは数年ぶりかも。まあ、さくさく読めるほどよい長さの本を選んでいるせいもあると思いますが…また感想が溜まらない間に更新します。こんなに真面目なペースで更新するのも数年ぶり(笑)

はなとゆめ (単行本)

はなとゆめ (単行本)

 正直、冲方さんにこんなお話が書けるなんて驚きました…なんて多才な人なのだろう。
 冲方さんを追いかけるようになったのは「マルドゥック・スクランブル」からなのですが、このときの印象はサイバーパンクと闘う美少女とハードな世界観、そして実はオヤジがカッコイイ(笑)というのが全てだったのですが、その後、コミック原作の「ピルグリム・イェーガー」や「シュヴァリエ」なんかを見て伝奇アクションもいける人だと認識を改め、「天地明察」や「光圀伝」で懐の深い時代小説・大河ロマンも素晴らしい、と。ところが、この作品はそのどれもに当てはまらない。帯の「わたしは、あの方を守る番人になる」で、てっきり宮廷の権謀術数の中で闘争するヒロインとして清少納言を描くのかと思いきや、存外に大人しく、しっとりとした筆致で中宮定子への思慕を歌い上げる、上品で穏やかな宮廷ロマンでした。あんまり読んでない自分が言うのもなんだけど、宮尾登美子さんみたい。女の生き様、的な。冲方さんの違う側面を知ることができた一冊でした。
インスマスの血脈 (The Cthulhu Mythos Files)

インスマスの血脈 (The Cthulhu Mythos Files)

 最近、「邪神艦隊」「邪神金融道」を読んだのをきっかけに、クトゥルー熱が再燃しつつあり、創土社さんの「クトゥルー・ミュトス・ファイル」アンソロジーの最新刊(今のところ)、手に取りました。いやあ、味わい深い一冊。
・「海底神宮」…絵巻物、という珍しい形式(獏先生はよくコレやってる気がしますね…)のクトゥルー物語。寺田克也氏の重厚にして深遠なタッチのイラストもさることながら、獏さんのそれこそ海の底から誘うような文章がとんでもなく蠱惑的。
・「海からの視線」…オーソドックスなインスマス?物。もっと細部を描きこんでもらって、(「鍵」である彼の過去とか、国家権力と教団の闘争とか)長編でも良かった気がする。
・「変貌羨望」…「美しい死体」への恋慕、というこれだけでも破滅的に詩的なテーマなのに、そこにインスマスネタを…こう来るか!という感じ。素晴らしい。おぞましくも美しい。これも、十分長編1本分に相当する密度の中編でした。樹海へは絶対行きたくありません(笑) 前述の「海底神宮」を読んで、久しぶりに獏さんを読みたくなったので手に取りました。
 美貌の天才格闘家、龍王院弘の若かりし日の物語。キマイラシリーズを追いかけなくなって久しいですけど、懐かしいキャラ名や、この格闘シーンの熱量。なんか、もう一度キマイラシリーズを再読したくなってきました。…でも、それはそれでストレス(最新の「玄象変」すらもう3年以上前の本だもんなあ…)溜まりそうですが。ところで、この番外編「青龍変」で繰り返し出てくるのが、弘が師・宇名月典善ら超人的な強さの格闘家達の世界に触れ、「もう引き返せない」と自分に言い聞かせるシーン。ただ強さを極めるため、戦い続ける者どもの世界、彼岸にわたってしまったことの感慨。ふと、獏さんの小説って全て、その「彼岸」に惹かれてしまった者たちの物語であるような気がする。だとしたら、獏さんは小説を語ることで此岸と彼岸の渡し守をしているのかも、なんて思ったりして。

 ちなみに、次に読み始めたのは、これも「インスマス〜」つながりで黒史郎さん。「幽霊詐欺師ミチヲ」を手に取りました。「未完少女ラヴクラフト」も気になるけど。