「空の境界(下)」(bk1)

空の境界 下 (講談社ノベルス) 
 上巻の感想をアップしてから約半月、やっと読了です。しかし、この中身って分割すれば長編何作分にもなりそうなのに、上下二巻で一気読みできるなんて、贅沢なつくりだなあ。「螺旋矛盾」と「忘却録音」あたりの、魔術談義と魔術師同士の闘いが最高。高度な次元の知と知のバトル、なんてエキサイティングな。この作品に登場する魔術は、各種のオカルト知識をアレンジして、独特の定義・論説を展開していて、しかもそれに破綻がないから、バトルにも自然とリアリティがある。そして極めて高次元にしてロジカル・哲学的な口げんか(笑)。最高です。
 ですが、式と幹也の関係は、ああいう風に落ち着くにはまだ早すぎるような…この辺は人それぞれ意見がわかれそうですが。
 あと、笠井潔さんの解説も、とても面白く読めました。過去の伝奇小説から「新伝綺」にいたる流れと、両者の違いが俯瞰できる感じです。と言いながら、論説が高度すぎて、アタマがついてってないんですが>俺(情けない)
 ともかく、「新伝綺」ムーブメントの「根源の渦」、と成りうるに相応しい作品だったと思います。