「空の中」有川浩(bk1)

空の中
 というわけで、やっとまともな読了報告。
 なんともいえない、読書している最中の感触からして「空の中」を突き進んでいる様な、爽やかで眩しく透明感に満ちて、しかし息苦しい感じのお話し。ディックという、聡明でありながら無知で無垢でしかも巨大な存在、その下に立つと、本当に人間って勝手で小さい存在に見えてくる。だがしかし、その小ささ故に、愛おしく、醜くも美しくあるのだ。うーむ思いついたことをバラバラ書いてると何やら意味不明っぽいですが、なんかこの小説の中に出てくるいろんなものの構図って、割と正反対のモノを配置してある気がします。大人と子ども、自己と他者、無垢とエゴ、個と集団、巨大なものと小さなモノ、空と大地、憎しみと愛情…それらが、全部調和して出来ている物語の全体像は、やはり果てしなく透明で美しい。この構図を眺めていると、この対比そのものが、我々を取り巻く世界の構図そのままであることに気づく。 つまり、世界はこんなにも美しいのだ、と。
 読んでいて何度も涙がこぼれた。ページを繰る手が止まらなかった。間違いなく傑作です。
 妻にも薦めて読ませましたが、面白かった言うてました。