「すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 浅倉 久志訳(bk1)

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)
 いやー、作者が実は女性だと聞いてびっくりですが、たしかにこの柔らかく包み込む様な文体と物語の流れは女性ならではかも。キンタナ・ローという不思議な土地の不思議な海、そこで起こる奇譚は、ちょっと怖い話もあるのに、なんだかふわふわしてつかみ所がない雰囲気なので、なんか全体的に優しくておおらか。本当に、柔らかい光に満ちた海の中を漂っているかの様な感触の一冊でした。
 でも、海ってたしかに怖くて不思議で不可解ですよねえ。そういう意味で、この本に収録されている作品は全部ひっくるめて「海そのもの」の姿なのでしょう。

 それにしても、年内に読書関係で更新できて良かったとほっと胸を撫で下ろす俺でした(笑)。このままいくと、「愉快な60年代特撮映画サイト」になってしまいそうで…(笑)