「私が見たと蠅は言う」エリザベス・フェラーズ 長野きよみ訳(bk1)

私が見たと蝿は言う (クラシック・セレクション) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 フェラーズは結構持ってるのに積みっぱなしだった作家さんの一人なんですが、今回初挑戦してみました。うむ、噂に違わぬ面白さです。キャラ立ちまくりのアパートの住人たち、お互いに疑心暗鬼になるかと思いきや、「この中に犯人が」とか言いながらしっかり仲良く飲み会やったりしている(笑)彼らが、なんかゆるくてカワイイのです。だけれど、後半、次から次へと仮説が打ち立てられ、思い思いにエウレカとばかりに推理を披露し合うあたりは、毒チョコ風味でエキサイティング。まあ、謎としても伏線としても仕掛けとしても、どちらかといえば大人しめで地味な部類に入るんだろうと思いますが、そのテンポの良さと人物描写の厚みに代表される小説的技巧と、細かい伏線、論理性だけで十分おなかいっぱい。面白かったです。
 俺、このままフェラーズ祭り始めてしまいそうです(笑)。今読んでるの「猿来たりなば」だし。