「傀儡后」牧野 修(bk1)

傀儡后 (ハヤカワJA) 
 日本SF大賞受賞作のこの作品ですが、文庫化にあたって表紙イラストがアニメっぽいものに変更されているのは、近年のラノベムーブメントへの傾斜でしょうか(笑)。いや、文句言ってる訳じゃないんです。作中登場人物の雰囲気ぴったりだし。
 いや、面白かったです。サイバーパンクをかなりどろどろねちょねちょな肉感的ホラーに融合させ、しかもノワール風味でドラッグがばんばん出てくる。その結果生まれ出たのは、まさに異形の世界観。ページを繰る手が汗ばむのを感じる傑作でした。ですがまあ…終盤はいささか失速した感じあり。自分が鈍いのかもわかりませんが、「傀儡后」という存在がなんなのかも、正直ピンときてないですし(頭ではわかってますけどそりゃ。実感として分かるのとは別の問題)。
 ともかく、大賞に相応しい作品であることには間違いありません。