「最後の審判の巨匠」レオ・ペルッツ 垂野 創一郎訳(bk1)

最後の審判の巨匠 (晶文社ミステリ)
 実はこの本の訳者さんの正体がプヒプヒさんであったことを、割と最近まで知らなかった俺です(恥)。密室状況の死、妖気漂う舞台仕立て、不敵な探偵役、と三つ揃えば、当然ばりばりの本格を期待するのがミステリ小説読みの人情というもの。最後まで引っ張られた後に種が明かされると、それはあっさり裏切られますが、代わりにぽっかり口を開けるのは得体の知れない怪物的に理解不能な奈落。いやあ、不思議な作品でした。繰り返しますが、本格ミステリカタルシスをこの本に求めるのは少々厳しいです。ただ、作者もそんなものははなから書く気がなさそうですが。だがしかし、「トランペット赤」というキーワードはやはり滅茶苦茶蠱惑的で、「甘美なる混沌」とでも言うべきなかなか表現に困るけれど素敵な感覚に酔いしれることができました。そんなこんなで、二日酔いになりそうなほどくらくらしちゃう本でした(めちゃくちゃ褒めてます)。