「陽気なギャングが地球を回す」伊坂 幸太郎

 いやー、随分旬を過ぎてから読んでますが、面白い!痛快、爽快、軽妙洒脱。
 伊坂さんて、本当に面白い会話シーンを書くのが巧いし、ストーリーテリングの腕前も最高。複線もきっちり引いてきっちり回収するし、それでもってしかもリーダビリティも最高。もう褒め言葉しか思い浮かびませんよ。
 終盤、なんだか雲行きが怪しくなってきて、こんな明るくて楽しい話が、まさか転落するかのようにダークになってくのかと心配しましたが、なんか閃くものがあって、成瀬らの計略に思い当たったので、ニヤニヤしてしまいました。いやあ、繰り返しますが痛快。こういう銀行強盗なら、銀行であったらサイン貰いたいっすね、マジで。響野さんの演説も聴きたい(笑)
 ときに、大沢在昌の「新宿鮫」シリーズが、よく「ヒロイック・ファンタジーのようだ」と評されるのを耳にします。鮫島のキャラクターが、ファンタジーRPGにおける主人公、とりわけ誇り高き騎士に共通するものを多く持ち、また巨悪に立ち向かう事件解決への道も、ラスボスを目指す様子を思わせるし、出てくる麻薬や凶器も結構架空のものが多かったりして、そういう意味であれは舞台を新宿にしたファンタジーだといえる。
 この図式に当てはめると、この「陽気な〜」も、ファンタジーRPGのような雰囲気ではある。ただしこちらは、一人の英雄の活躍を追いかけるのでなく、様々な特殊能力と個性を持った冒険者パーティが、わいわいがやがやとダンジョンを攻略する感じ。いつかまた、このパーティの新しい冒険譚を読みたいものです。マジで。

陽気なギャングが地球を回す
伊坂 幸太郎
祥伝社 (2003.2)
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