「図書館戦争」有川浩

図書館戦争
図書館戦争
posted with 簡単リンクくん at 2006. 2.20
有川 浩著 / 徒花 スクモイラスト
メディアワークス (2006.3)
通常24時間以内に発送します。
白状しましょう。タイトルを見た瞬間、「おお、有川さん、『空の中』『海の底』と続いた自衛隊・軍事路線から、新境地か?」と期待し、読み始めて「また軍隊モノかよ!」とツッコミ、失望し、でも読み進めると…やっぱり面白いんだなあ。読み出すと止まらず、一気に読み切ってしまいました。とにかくまあ、この人ってば軽口の叩き合いと痴話喧嘩を書かせると本当に右に出る人いないんじゃないかしらん。その部分だけ読んででもストーリーそっちのけで楽しめる勢い。
それはともかく、図書館がテーマということで、元図書館員であった俺には馴染みが深いテーマでして。ここに描かれている図書館のあり方や、表現の自由や個人情報の取り扱いについての図書館という組織の立ち位置は、まあ設定が設定だけに誇張があったりカリカチュアライズされている感は否めないけど、現実でもまるっきりこの通りなのです。
で、真面目に図書館員としての責務を果たそうと努力すればするほど、「図書館の自由に関する宣言」とか「ユネスコ世界図書館宣言」の存在を知らず知ろうともしないバカと、不毛なバトルを繰り広げる羽目になるのも一緒。今は、行政の財政難も後押しして、もっと立場が危うくなっているっぽい。まあ、なくても死なないのが図書館ではあるんですけど、やっぱり教育は未来への財産と考えて、きちんと最低限投資すべき施設だと、図書館を離れた今でも強く強く思いますですよ俺は。
で、作品の感想に戻りますが、ネタがやはり少し地味なので、「空の中」とかに比べると、展開のサプライズや巨大な感動というものは少し落ちます。結末部分で分かる「正義の味方」の正体も、早くから見当はつくし。ですが、後書きによると「小説で月9」が当初の目的だったらしいので、その意味に置いてはしっかり完成されています。やっぱり巧いなあこの人は。

「パクリ・盗作」スキャンダル読本

「パクリ・盗作」スキャンダル読本

宝島社 (2006.2)
この本は現在お取り扱いできません。
この本を手に取ったのは、飛鳥部さんの「誰のための綾織」絶版回収騒動について、詳しく書いてあるかと期待してのことだったのですが、この件についての記事は少なめ。ただし、この事件についてブログでコメントした山口弁護士のインタビューが載っているので、それなりに勉強になりました。自分的には、「エデンの花」絶版騒動も飛鳥部さんの事件も、「やりすぎ」って印象ですが、このインタビューを読んで、よりその思いは強まりました。無論、どっちもあからさますぎで下手だなあ、とは思うわけですが、正確な意味における著作権侵害とはやっぱ違うわけで、それをこんな風にざっくり抹殺しちゃうってのは、山口氏もおっしゃるとおり「表現の自由に関する制約」になって、もっと面白い作品が生み出される可能性をつみ取ってしまい、業界を衰退させる、つまり出版社にとっては自分の首を絞めることになると思うんですが…
こんなことを言うと、「面白ければパクってもいいのか」と言われそうですが…本当に作品の根幹に関わるような部分のあからさまな模倣や、文章内容ほとんど同じみたいなパクリっつーのは、法的にはどうであれ、基本的にその作者が表現者として無能であることをさらけ出すわけですから、結局売れないだろうし社会的制裁は受けるわけじゃないですか。だから、圧力にただ屈する形で(原書房の場合は、専門家にすら相談してないっぽいわけですし)絶版とか臭い物には蓋方式でなく、ちゃんと読者に委ねるようにすべきだと思います。

「アザゼルの鎖」梅津 裕一

アザゼルの鎖
アザゼルの鎖
posted with 簡単リンクくん at 2006. 2.20
梅津 裕一〔著〕
角川書店 (2002.2)
この本は現在お取り扱いできません。
実はこの作者さん、俺が栗本薫氏のファンが集うパティオ「天狼パティオ」に出入りしてた頃にお知り合いになった人なのです。当時も小説家を目指して頑張っておられたので、デビューしたときは嬉しくて…ちなみに、この人はノワール風味やピカレスク・ロマン風味がお好きなようなんで、この作品にもそれは顕著です。しかし、この陰惨なお話をスニーカーから出すってのは、なかなか英断が要ったんじゃないかと(笑)。それはともかく、おそらく作品のウリであろう刑事の暗黒性が、読者の年齢層を配慮してか遠慮がちなのが、少し残念。

「Kar‐MAN 業の獣」梅津 裕一

Kar‐MAN
梅津 裕一〔著〕
角川書店 (2002.3)
通常2-3日以内に発送します。
うーあー、まだまだこれからってところで終わってるんで続き読みたいなあ。
ともかく、個性的な6人のキャラが、まだまだこれから活躍できそうなのに、十分暴れきっていない感じがするのが残念。それはともかく、特殊なフィールドのせいで火器が使えない、とか、人を殺すとカルマという獣が生まれる、とかいう設定の妙に唸らされ、「なぜ捕虜のマナラ兵が誰もカルマを連れていないのか(人殺しをしていないはずはないのに)」といった大きな謎の解答にもゾクっときました。面白かったです。