「仮想世界の優しい奇跡」早見 裕司

 ネットの世界で起こるちょっとしたトラブルを解決する探偵さんのお話ですが、ネタがネタだけに、時間が経ってから読むと当時のネット事情が思い出されて懐かしくなります。この頃はまだ、普通のパソコン通信が健在だったのですよねえ(^^;
 ちなみに、二つめのお話に出てくる「横溝塔」会員のみなさん、モデルのみなさんのお顔をほとんど知ってます(笑)。だからどうしたと言われると困りますが(笑)。
 ともかく、晋一郎くんも真理香さんも、嫌みなところがなくって好感度です。リーダビリティも良いので、サクサク読めますし。なので、事件によっては結構ヘビーで人間のヤなところを取り扱ってるところもありますが、それでも後味は不思議と悪くないです。
 ですが、晋一郎くんが声を失った背景にある事件はどうやら裏があるらしく、これがシリーズ全体に横たわるメインの謎となる模様。今後の展開が楽しみです。
 ちなみに、早見さんは普段はファンタジーやホラー系のお仕事が多い作家さんなんですが、ミステリにも造詣が深く、それだけにこの作品もきちっと本格しています。氏の優しい人柄を反映してか、事件の謎や真相もやわらかくて、インパクトとしては弱い感じもしますが、それもかえって持ち味ですらあります。

仮想世界の優しい奇跡
早見 裕司
富士見書房 (2002.4)
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