「セリヌンティウスの舟」石持浅海

セリヌンティウスの舟
石持 浅海
光文社 (2005.10)
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「扉は閉ざされたまま」に続いて、限定されたメンバーと空間の中、細く焦点を絞り込んだ推理で一転二転するパターンのお話。今回は、ディスカッションで推理が展開されるので、毒チョコ風味。「友情」と「自殺の真相」についての推理なんですが、こういう話では得てして、登場人物たちの暗黒面をあぶりだし、互いの不信をあおり立てる形でサスペンスが盛り上げられる傾向が強いものですが、この話の場合はどこまでもお互いと自殺した人を「信じ抜く」ことによって真相に迫ろうとしている点が斬新に思います。ただ、やはり「信じる」ことが前提であるため、お互いの疑わしい点を指摘する切っ先が随分甘く、推理合戦としてはいささか緊張感に欠けます。それでも、「走れメロス」と巧くからめた謎と真相は、やはり石持氏の面目躍如という感じ。リーダビリティも良いし、サクっと面白く読めました。