最近読んだ本

 ここ最近、本当に読書ペースが落ちてます。ここまでで24冊。

無名都市への扉 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)

無名都市への扉 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)

 最近新刊が出るたびに購入が癖付いてしまったCMFの新刊。「無名都市」をテーマにした競作アンソロジー、今回の顔ぶれも豪華です。

・「無名と死に捧ぐ」…岩井志麻子氏のデビュー作「ぼっけえ、きょうてえ」を彷彿とさせる、貧困とそこから生まれるグロテスクな人間模様がもやもやした恐怖を生み出す逸品。哀しくもおぞましい歪な女の一代記。「無名都市」は飽くまで触媒としてしか使われていない気がするけど、これはこれで読み応えあり。

・「電撃の塔」…クトゥルー流変化球のボーイミーツガールストーリーといった風情。イザナギイザナミの神話も絡め、余韻の残る…というか祈らずにいられないラスト。

・「無明の遺跡」…TRPGのリプレイなんて読むの何年ぶりかしらん。相互のプレイヤー同士で与える情報を巧みに伏せ、それらを操ってサスペンスを作るインセインのルールが面白く、興奮するリプレイでした。プレイヤーのみなさんの個性も炸裂していて、特に外道にして下品な(笑)岩井志麻子さんの数々の言動には爆笑。なんか、インセインをプレイしたくなってきました。現実には時間なくて難しいと思うけど、それだけにまたクトゥルーとインセインがコラボしたリプレイをまた読みたいなあと思う。そういえば昔自作でTRPGのシステム作ったりして、ここでも公開したりしてたっけ。懐かしい。しばらく下げてたけど、この機会に再びアップしてみました。興味がある方はどうぞ→http://homepage3.nifty.com/mayudaya/RPG.htm 俺がまだ「ショーシャンク」という名前で活動してた時代のお話。あのころは若かった。いろんな方にご迷惑をおかけしました。陳謝。

魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

魔界転生(下) 山田風太郎忍法帖(7) (講談社文庫)

 巨匠の歴史的傑作、読了。最初に「魔界転生」に触れたのは石川賢版のコミカライズで、そちらからいうとやはり大分地味なのだけれど、魔界七人衆と柳生十兵衛との虚々実々の駆け引き、トリッキーな剣戟バトル、余韻を残すラストシーンと、堪能しました。やはり山風は面白い。まだまだ読んでない作品も多いし、どんどん手にとって行きたいと思います。

ここまでで22冊。

 読書ペースもかなり落ち込んでいて、1月からここまでで22冊。年間50冊は難しいかもしれんな…

 すっかりクトゥルー・ミュトス・ファイルズの目玉となっている感じのある、菊地先生のクトゥルー戦記シリーズ第二弾。かなーり遅れて「ヨグ=ソトース戦車隊」読了。展開としては戦闘シーンやモンスターのキャラクター・設定どれも、菊地先生にしては地味で大人しい感じでしたが…ワケありそうな戦車隊の面々が何故邪神との取引に応じたのか…その真相が判明する終盤には胸が締め付けられました。菊地先生一流の反戦メッセージ。そして、人の心をどこまでも信じようとする、哀切な祈りにも感じました。人はどれほどその手を罪と血に染めようとも、最後は「人」であることに変わりないのだと。集団的自衛権云々暴走している昨今に読むと、本当に切実。あと、菊地先生のクトゥルー作品を読んでいると、本当に邪神が身近で人に近しいものに思えてくる。

戦艦大和 海魔砲撃 (The Cthulhu Mythos Files)

戦艦大和 海魔砲撃 (The Cthulhu Mythos Files)

 今は泣き田中文雄先生の隠れた名作を、菊地先生が加筆…!という燃える作品なのですが、故人の作品に手を加えると言うことの難しさに直面された模様。あんまり邪神様関連の固有名詞が出てこず、なんか隔靴掻痒な感じで欲求不満がどうしても拭い去れない出来。少し残念だけど、編集者様や菊地先生がさんざ悩み抜いた末のこの結果なので、文句はないです。でも、もし田中先生がご存命であったなら、twitterでも某氏が言われてましたがご本人の加筆修正でよりCMFに相応しい出来で再度世に出ていたかもしれない。そう思うと、はやすぎた作品だったのかも。でも、山本五十六はかっこいいし、プロローグに登場する御大とナイアルラトホテップの漫才(笑)や、エピローグに登場する人物のまさかの正体など、まずまず楽しみました。

魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖(6) (講談社文庫)

魔界転生(上) 山田風太郎忍法帖(6) (講談社文庫)

 今更山風の最高傑作に触れております。上巻を読了したところ。感想は全編読み終えてから。

GWも読書

 先述の通り、GWはちょっとだけ読書がはかどったので、読了報告。

呪禁官 百怪ト夜行ス (The Cthulhu Mythos Files)

呪禁官 百怪ト夜行ス (The Cthulhu Mythos Files)

 呪禁官シリーズはずっと以前に1作目を読んだことはあったのですが、かなり記憶が薄れてて、そのせいでこの作品の主人公が前2作の主人公のお父さんと気づかず読んでました(恥)情けない…。それはともかく、「外伝」扱いするには勿体ない(人類の命運かかってるし)、重厚な伝奇ジェットコースターアクション巨編でした。次から次へと遅い来る敵、敵、敵、バトル、バトル、バトル!ページを繰る手が止まりません。満腹。なんだか勿体ない気がするので、呪禁官シリーズきちんと読み直そうかしら。

 実は甥っ子にプレゼントされた機龍警察シリーズ最新作。今回も読み応えありました。児童の自爆テロも辞さないという非情な敵相手に繰り広げられる極限状況の作戦と情報戦。スリリングでしたが、残念なのは、今回の主役がほぼ由起谷さんと城木さんなので、機龍乗り3人の影が少し薄くかったことでしょうか。しかし、ロシア出身のユーリとチェチェンのテロリストが対峙するという構図は本編でも触れているとおり奇妙な因縁に感じられますが、それだけにもうちょっと掘り下げて欲しかった気も。ちなみに、ラストはやっぱりほろりときました。由起谷のこの感情って、結局公僕として生きる全ての人にとっての答えであるような気がしますよね。

14歳からわかる生活保護 (14歳の世渡り術)

14歳からわかる生活保護 (14歳の世渡り術)

 お仕事関連で、興味深い本だったので読んでみました。雨宮さんというと、どうも過激な論調の方のようなイメージ(あくまで個人的印象。それほど著作も読んでいないですし)だったのですが、極めて現実的に、生きるために保護制度をどう活用すべきか、そして日本の保護制度の瑕疵を的確に論じてらっしゃいます。いやあ、自分が仕事してて、制度がもっとこうだったら自立も進められるのになあ、というジレンマを指摘されてて耳痛。こういう論点でこそ生活保護制度はもっと論じられるべきであって、受給することが罪みたいな論調は個人的に大嫌いです。

どんでん返し (双葉文庫)

どんでん返し (双葉文庫)

 挑発的なタイトルと帯につられて、ジャケ買いしました。会話だけで綴られる、奇妙な味わいの短編集。ですが、驚愕度としては、帯に書かれているほどでは…うーん。やはり、ここ20年くらいの本格・新本格ムーブメントの最中に揉まれた身としては、少し物足りない。とはいえ、端正で、大人っぽくて、小気味いいスパイスのきいた短編集であるのはたしかですが。

最近読んだ本

 年度末から年度初めにかけては流石に忙しくて、読書ペースも激減。とはいえ、読み応えのある本をじっくり読めたので満足なのです。ここまでで15冊。

機龍警察 暗黒市場

機龍警察 暗黒市場

 今回は三人の龍機兵搭乗者の一人、ユーリが主役。徹頭徹尾、ユーリがかっこよいのです。語られるユーリの過去、警官としての魂のルーツ、かつて誇りを失墜した己の過去との対決と、明かされる真実、回復される誇り…まさに「漢」のドラマ。
 機甲兵装同士の戦闘もいつもに増してエキサイティング。龍機兵の新型ではないかと疑われる「キキモラ」との激闘は手に汗握ります。前作も、前前作も面白かったけど、これはまた一段と傑作。次作・最新作の「未亡旅団」も楽しみ。

クトゥルーを喚ぶ声 (The Cthulhu Mythos Files)

クトゥルーを喚ぶ声 (The Cthulhu Mythos Files)

 すっかり「月刊クトゥルー」とでもいうべき地位を獲得した、「クトゥルー・ミュトス・ファイル」の最新刊。このシリーズの何がいいって、1冊の中に小説のみならず漫画や絵物語、様々な切り口の作品が詰め込まれたこのパルプマガジン的お得感。今回も満腹。

・「夢の帝国にて」…グロテスクだけどユーモアあふれ、しかも軌道エレベーター絡んでハードSF風味もあり。贅沢な一編。田中さんは好きな作家さんで「UMAハンター馬子」とか爆笑しながら読んだのでそういう風味を期待したのだけど、いい意味で裏切られました〜。ダンセイニ郷の創作神話を彷彿とさせるカタストロフィも、「眠れるクトゥルー」の目覚めに相応しい衝撃。

「回転する阿蝸白の呼び声」…回転寿司とクトゥルーという絶対合わさって欲しくない二つのコラボが最凶に楽しい。怖くて回転寿司食えない…変化球だけど、存在感抜群の一編でした。ところでこの話も「夢の帝国にて」も、何げに本のタイトルと同じく「クトゥルーを呼ぶ」者の物語になってるのは、意図的なんでしょうか?しかし、インスマス面になるのはイヤだけど阿蝸白は食べてみたい。

「Herald」…由緒正しいポラーという感じですが、いい雰囲気で引き込まれました。解説にあった「エロやグロも上品に」というスタンスがしっかり体現されてるのを実感。格調高し。

 月刊クトゥルー、3月は発売なかったけど、次回は牧野修さんの呪禁官シリーズの最新刊でもある模様。楽しみ。

クトゥルー漬け

 最近、創土社さんの「クトゥルー・ミュトス・ファイル」シリーズに手をつけたことがきっかけで、なんだか読書傾向がクトゥルー神話漬けになってます。

ユゴスの囁き (The Cthulhu Mythos Files)

ユゴスの囁き (The Cthulhu Mythos Files)

「闇に囁くもの」へのオマージュアンソロジー。帯の「脳缶って知っていますか?」が結構衝撃(笑)「インスマスの血脈」のときもそうだったけど、どれも美味しい粒ぞろいのアンソロジーでした。
「メアリーアンはどこへ行った」…あちこちで言及されていますが、ハードボイルドとしても結構読み応えのある1編。ジェイムズさんはまるまる1冊彼を主人公にしたハードボイルドものを読みたいくらいかっこいい。
「羊歯の蟻」…まさにこれこそ和製クトゥルー神話!と叫びたくなる宇宙的恐怖に満ちた話。日本の中山間地域の持つ閉塞感は、クトゥルー神話によく合う。そしてミ=ゴが脳を集める理由までさらっと解き明かされてしまったり。納得のオチ。
「蓮他村なずき鬼異聞」は、なんか不思議な絵巻物。浮世絵とクトゥルー神話も合うという新たなテイスト、新たな発見。とりあえず僧かわいそう(笑)特に、本編と関係なさそうな新聞記事コラの、バカップルにひき殺される…ごにょごにょ。
 毎月1冊クトゥルー、っていうのはなかなか濃い読書ですが、この画期的な試み、頑張ってついて行きたいと思います。「クトゥルーを喚ぶ声」も読むぞー。
未完少女ラヴクラフト (スマッシュ文庫)

未完少女ラヴクラフト (スマッシュ文庫)

 なんとラヴクラフト御大が美少女に!という画期的なネタがのけぞる。出てくるモンスターどももしっかりクトゥルー神話にちなんでいるんですが、ジェンキンといいミゴといい、なんかゆるキャラ的になってる。なんかカワイイ、優しいファンタジーになってます。こんなクトゥルー神話も素敵です。 過去に存在は知っていたけど未読だった菊地作品、再刊されてるのを衝動買い。一気読みしてしまいました。幻魔怪奇というか虚々実々というか、どれが現実でどれが幻かわからなくなるような不思議なバトル。真っ正面から異能同士がぶつかり合うバトルとはまた違った魅力でした。なにげに、本当の意味ではこれも「未完」なんですねえ。読編は…書かれるのかしら。それよりは「ヨグ・ソトース戦車隊」を早く読みたいけど(笑)

 3月に入る前に、比較的薄い本が多いとはいえ13冊。去年に比べると快挙です。

2月で8冊

 引き続きそこそこ順調な読書ペースです。とりあえず8冊。

幽霊詐欺師ミチヲ (角川ホラー文庫)

幽霊詐欺師ミチヲ (角川ホラー文庫)

インスマスの血脈」読んで、黒さんの作品を読みたくなったので、ふと手に取りました。例によって買ったのはだいぶん前。「幽霊を相手に詐欺」なんてどんなことするのかと思ったけど、なるほどな展開でした。マミコさん怖いけど素敵。カタリさんクールでかっこいい。面白かったです。2,3とシリーズ続いてるみたいなので、続けて読んでみようかな。

 ある方に伝奇小説のバイブルとして改めて山風を薦められたので、久しぶりに手に取りました。上下巻でそこそこの長さだったのですが、めくるめく展開に翻弄されている間に気づくと読み終わっていた感じ。読み応えはあったけど、まだ物足りない気がする。二人の十兵衛」のキャラがあまりに魅力的で、もっともっと活躍を読みたくなってしまうのです…無論、その他のサブキャラ、特に一休や義円、世阿弥、竹阿弥も躍動感いっぱい。面白かった〜。御大がこれをお書きになったとき、もう老境に差し掛かられていたと思うのだけど、この稚気、縦横無尽の想像力、エネルギッシュさはどうよ。正直、嫉妬してしまいます。そういえば、御大の名を知ったのは菊池秀行さんの対談か何かだったと記憶してますが、間接的とはいえ物語に触れたのは石川賢作画の「魔界転生」でした。どちらも故人と思うと寂しい…。

 この次には、クトゥルー・ミュトス・ファイルの「ユゴスの囁き」に手をつける予定。最近なんだかクトゥルーづいてます。

今年は珍しく

 1月の間に本をザクザク読めてる気がします。前回の更新から後、3冊読了。本年の読書、現在5冊。こんなのは数年ぶりかも。まあ、さくさく読めるほどよい長さの本を選んでいるせいもあると思いますが…また感想が溜まらない間に更新します。こんなに真面目なペースで更新するのも数年ぶり(笑)

はなとゆめ (単行本)

はなとゆめ (単行本)

 正直、冲方さんにこんなお話が書けるなんて驚きました…なんて多才な人なのだろう。
 冲方さんを追いかけるようになったのは「マルドゥック・スクランブル」からなのですが、このときの印象はサイバーパンクと闘う美少女とハードな世界観、そして実はオヤジがカッコイイ(笑)というのが全てだったのですが、その後、コミック原作の「ピルグリム・イェーガー」や「シュヴァリエ」なんかを見て伝奇アクションもいける人だと認識を改め、「天地明察」や「光圀伝」で懐の深い時代小説・大河ロマンも素晴らしい、と。ところが、この作品はそのどれもに当てはまらない。帯の「わたしは、あの方を守る番人になる」で、てっきり宮廷の権謀術数の中で闘争するヒロインとして清少納言を描くのかと思いきや、存外に大人しく、しっとりとした筆致で中宮定子への思慕を歌い上げる、上品で穏やかな宮廷ロマンでした。あんまり読んでない自分が言うのもなんだけど、宮尾登美子さんみたい。女の生き様、的な。冲方さんの違う側面を知ることができた一冊でした。
インスマスの血脈 (The Cthulhu Mythos Files)

インスマスの血脈 (The Cthulhu Mythos Files)

 最近、「邪神艦隊」「邪神金融道」を読んだのをきっかけに、クトゥルー熱が再燃しつつあり、創土社さんの「クトゥルー・ミュトス・ファイル」アンソロジーの最新刊(今のところ)、手に取りました。いやあ、味わい深い一冊。
・「海底神宮」…絵巻物、という珍しい形式(獏先生はよくコレやってる気がしますね…)のクトゥルー物語。寺田克也氏の重厚にして深遠なタッチのイラストもさることながら、獏さんのそれこそ海の底から誘うような文章がとんでもなく蠱惑的。
・「海からの視線」…オーソドックスなインスマス?物。もっと細部を描きこんでもらって、(「鍵」である彼の過去とか、国家権力と教団の闘争とか)長編でも良かった気がする。
・「変貌羨望」…「美しい死体」への恋慕、というこれだけでも破滅的に詩的なテーマなのに、そこにインスマスネタを…こう来るか!という感じ。素晴らしい。おぞましくも美しい。これも、十分長編1本分に相当する密度の中編でした。樹海へは絶対行きたくありません(笑) 前述の「海底神宮」を読んで、久しぶりに獏さんを読みたくなったので手に取りました。
 美貌の天才格闘家、龍王院弘の若かりし日の物語。キマイラシリーズを追いかけなくなって久しいですけど、懐かしいキャラ名や、この格闘シーンの熱量。なんか、もう一度キマイラシリーズを再読したくなってきました。…でも、それはそれでストレス(最新の「玄象変」すらもう3年以上前の本だもんなあ…)溜まりそうですが。ところで、この番外編「青龍変」で繰り返し出てくるのが、弘が師・宇名月典善ら超人的な強さの格闘家達の世界に触れ、「もう引き返せない」と自分に言い聞かせるシーン。ただ強さを極めるため、戦い続ける者どもの世界、彼岸にわたってしまったことの感慨。ふと、獏さんの小説って全て、その「彼岸」に惹かれてしまった者たちの物語であるような気がする。だとしたら、獏さんは小説を語ることで此岸と彼岸の渡し守をしているのかも、なんて思ったりして。

 ちなみに、次に読み始めたのは、これも「インスマス〜」つながりで黒史郎さん。「幽霊詐欺師ミチヲ」を手に取りました。「未完少女ラヴクラフト」も気になるけど。