「誰でもない男の裁判」A.H.Z.カー 田中 融二〔ほか〕訳(→bk1)

誰でもない男の裁判 (晶文社ミステリ)
 ぶっちゃけ、Enigmaさんのブログで各編の感想をアップされているのに便乗して、慌てて読みました(笑)。いや、以前からこちらのカー様も読んでみたい作家さんの候補ではあって(無論、一番読みたいのは「妖術師の島」ですが)、この本も発売するや否や速攻で買ったものではあったのです。
 この短編集自体が結構バラエティに富んでいて、全体の感想書くのが難しいのですが、どれもトリックやロジック、もしくはプロットとして、衝撃的であったり目新しかったり、派手であったりはしません。ですが、それでも表題作のように深く抉られる爪痕のように印象に残ってしまうのは、宗教とか運命の皮肉とか、鋭いテーマとがっしり隙間無く組み合わさっているからでしょう。ですが、全体としてオカルト風味の話が多いのは、さすがは「妖術師の島」の作者、という感じです。ちなみに、「黒い子猫」とか猫好きには辛すぎる話ですが、その反面「猫探し」など萌えて萌えて仕方のない話(笑)があったりするので、やっぱりこのカー様は猫が好きなのでしょう。
 なんだか支離滅裂な感想ですが(いつもか?)、マイフェイバリットはやはり表題作、あと、実は相当手垢の付いたトリックを小道具一つでエキサイティングに変えてしまう技巧が見事な、「姓名判断殺人事件」あたりでしょうか。あと、萌え対象として「猫探し」(笑)