「天城一の密室犯罪学教程」天城 一著・日下 三蔵編、(→bk1)

天城一の密室犯罪学教程
 お腹一杯の一冊でした。天城氏にとっては、ミステリは娯楽である以上に思想を表現する手段でもあったのだな、としみじみ感じます。だからこそ、名探偵摩耶氏の職業は哲学者でなくてはならず、島崎警部は戦後の混沌の中で手探りせねばならなかったのでしょう。ちなみに、天城作品は昔から難しいと感じていて、今回も難しくて短編一本読むのも何度も読み返しながらだったのですが、山沢氏の一文を見てちょっとほっとする。ああ、やっぱり天城作品は難しいんだ、俺が特別人一倍阿呆なわけじゃないんだ、と(笑)
 ときに、やっぱり最高傑作は「高天原の犯罪」だと思う。今回二度目に読んだが、伏線からテーマ、それに絡めたストーリーの運びと、全部本気で無駄がない。