「喉切り隊長」ジョン・ディクスン・カー著 島田 三蔵訳

 しくしくしく。ほんのもないだ(つーても3年も前だが)再刊されて喜ばれたこの名作が、bk1じゃもう品切れですってよ奥様。アマゾンで在庫あるみたいですけど、はまぞうに画像はなくってよ。悲しいわね。
 と、日本の出版事情についての愚痴はさておいて。久々のカー、再刊されるやいなや大喜びで狩った割には積ん読になってたのを今頃読了であります。
 とにかく、カーがいかに稀代の策士フーシェに入れ込んでいたかがよくわかる作品です。
 喉切り隊長事件の真相とか、英仏スパイ戦とか、しっかり密室好き・本格好き・そして歴史好き国際謀略もの好きにアピールする点は数々あれど、物語の主役としてはどうやらイギリススパイのアランくんに形式上なってはいても、フーシェに始まりフーシェに終わる。彼の悪魔的でシニカルな知性と洞察力、そして尊大な物言い、これを存分に味わうための小説がこの作品なのであります。解説を読むと、カー自体相当この人物に入れあげてたみたいだから、まさにこの物語は彼の脳内娯楽をそのまま本にしたようなものです。が、カーらしい大仕掛けな舞台装置、真相のからくり、とカーファンなら絶対満足できるいつものサービスもしっかり整えられていて、なかなかに豪華な一品となっております。本屋で見つけたら買いですってよ奥様(やめんかい)。