「海の底」有川 浩

傑作「空の中」に続く怪獣SFだが、今回はかなり趣が違います。群体だからかもしれないですが、レガリスにはフェイクのような感情移入の余地はまるでなく、単なる駆逐されるべき脅威としてしか描かれません。そして、その脅威に立ち向かう人々の姿の群像劇という側面が、かなり強い。ですが、前作との間にははっきりした共通点もあり。今回もまた、「かっこいい大人」が存分に描かれています。それぞれの立場で、それぞれのできることを精一杯命を賭けてやりぬく。我々大人が子どもたちに見せたい背中、世の中捨てたもんじゃないよと無言で訴えられる姿。こういう大人に、俺もなりたかったなあ(おい)。そしてまた、きりしお内での淡い恋い、子どもたちの人間模様も、余すところなく描きこまれ、少しの手を抜いた形跡も認められない。これまた、「空の中」に勝るとも劣らぬ傑作となりました。うーん、嫉妬するよ、同い年の有川さん(またかい)。 

海の底
海の底
posted with 簡単リンクくん at 2005. 6.26
有川 浩
メディアワークス (2005.6)
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