「なめくじに聞いてみろ」都筑 道夫

なめくじに聞いてみろ
都筑 道夫著
扶桑社 (2000.10)
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都筑さんの作品はこれまで多く読んでいるわけではないんですけれども、読んでいたとしても本格ミステリが多いというか、本格ミステリに的を絞ってたところもありまして。
最近、岡本喜八監督の「殺人狂時代」の原作がこの作品だと聞いて、思わず手に取った次第(つーても映画の方も観たわけではないんですが(笑)。最近DVD化もされたし、近いうちに是非観たい)。
やー、通信教育で育成された殺し屋どもとバトルするという、荒唐無稽も甚だしい作品なわけですが(なんでよりによって通信教育か…)ほとんど山田風太郎忍法帖シリーズか、自分にとって慣れ親しんだ例えとしては菊池秀行か夢枕獏かという、マンガチック超絶バトルの数々。主人公が相手する殺し屋はみな、それぞれに個性的で独特の殺しの技があるわけなんですが(この、一体どんな殺し方をするのかを探る部分は、微妙に本格めいたところもあり。いや、真面目に本格を期待すると肩すかし食らうけど)、モノによってははっきりSFの領分だったり、本当に自由奔放に描かれています。書かれた時代が時代だけに、いささか台詞回しが古風なんですが、それも含めて、60〜70年代のB級アクション映画を観ているような、チャチといえばチャチだけど、なんだか捨てがたい不思議な魅力に満ちてます。そうした脳天気なバトルの連続に見えながらも、終盤で敵をほとんど斃してしまった主人公の口から、「殺し屋どもを始末しようとして、理想の殺し屋が生まれてしまった。それは自分だ」というような発言が洩れたりして、なんだか「怪物と戦うものは自分が怪物にならないように注意せよ」的な哀しみが込められているような気もして、深いなあ(深読みしすぎ?)。
ともかく、面白い。そして、「なめくじに聞いてみろ」という台詞が、とんでもなく格好良く使われているのです。しびれます。